症例11 歯周外科(フラップ手術)について

先日、患者様より2件のお問い合わせをいただきました。

まず、「歯周病専門医」についてお問い合わせをいただきました件につき、お答えいたします。歯周病専門の歯科医師が「歯周病専門医」であるか?というお尋ねでした。残念ですが、歯周病専門だからといって「歯周病専門医」を名乗ることはできません。「歯周病専門医」を標榜できるのは、厚生労働大臣に認定された歯科医師だけです。「歯周病専門」とはあくまで「自称歯周病専門」であり、自らがそう思っているだけで、全く客観性がありません。「歯周病専門医」とは厚生労働大臣に認定された資格名を指します。

平成14年4月1日付けの医療機関の広告規制の緩和に伴い、厚生労働大臣に認定された資格名が広告できることとなりました。歯科医師においては、歯周病専門医口腔外科専門医小児歯科専門医歯科麻酔専門医歯科放射線専門医の5つに限られます。医院の看板や外観に表示できるものは、これら5つだけです。これら以外に「・・・専門医」なるものがあるとすれば、なんらかの学会や組織が認定したにすぎず、厚生労働大臣に認定されているわけではないので、広告はできません。歯科医院名に関しても、「・・・審美歯科」などの医院名を申請したとしても、厚生労働省の許可がおりません。医院名に含まれていない限り、「審美」や「インプラント」などの文字を、医院の看板や外観に表示することも、もちろんできません。なぜなら、医師や歯科医師は、患者様の生命や健康に関わる仕事なので、患者様がそれらに惑わされて、不利益を被ることがないように、医療法によって広告できる範囲が厳しく規制されているためです。

「歯周病専門医」の資格を得るためには、まず、「歯周病認定医」の資格を取得しなければなりません。「歯周病認定医」とは、「3年間研修施設で研修して、基本的な歯周治療の知識と技量をマスターした上で認定医試験に合格した日本歯周病学会員」を指します。さらに「歯周病専門医」とは、「認定医取得後2年間研修施設で研修して、専門的な歯周治療の知識と技量をマスターした上で専門医試験に合格した日本歯周病学会員」を指します。「歯周病専門医」は、取得すること自体が非常に難しい資格であり、取得するためには大変な努力が必要です。また、「歯周病専門医」は5年毎に更新していかなければその資格を失います。更新するためには、全国で開催される日本歯周病学会への参加や、学会発表など、多くの事柄が義務付けられています。取得できたとしても、常に研鑽し続けなければなりません。このような理由から、「歯周病専門医」は山口県内に7名しかいません。歯周病認定医を含めても14名と少数です。ただ、取得した暁には、「歯周病専門医」として厚生労働大臣に認定されることになり、広告できるのはもちろんのこと、何より歯科医師にとっては、難関を乗り越えたという誇りと名誉のある資格なのです。「歯周病専門医」を調べるには、インターネットで 「歯周病専門医」 と検索していただき、「日本歯周病学会の認定医・専門医名簿一覧」でご確認いただけます。

あと1件は、「歯周外科をした後に歯肉は下がってしまうのか」というお問い合わせでした。歯周外科をした後に、歯が長くなったり、歯肉が平らになったり、歯と歯の間に大きな隙間が開いて、空隙が黒く見えたりして、会話中に空気が漏れて喋りづらかったり、見た目が悪くなってしまったなどの経験をお持ちの患者様がいらっしゃると思います。それらが原因となり、日常生活に悪影響が生じないようにするためには、歯周外科をおこなう際に、ぜひとも気をつけなければならない注意点がいくつかあります。今回は、できるだけそれらが発生しないように、歯周病専門医としての立場から、注意している点を、症例で説明します。

1は初診時の写真です。2000年11月13日初診、40代女性です。右上3のクラウンがはずれたことを主訴に来院されました。前歯はセラミックで治療されていましたが、歯の軸が斜め右側に大きく傾いており、見た目が悪い状態でした。上顎に関しては、既に全部の歯がクラウンにより修復されていました。歯周治療とともに、歯肉の位置を整え、綺麗な歯並びにする治療をしました。患者さまの歯周病の状態は、歯周外科が必要なほど進行している部位がありました。

2は、治療終了後、2003年11月12日の写真です。上顎は全部の歯をセラミッククラウンにより修復しました。下顎は、右下67がインプラント、右下56と左下56はセラミッククラウンにより治療しました。総合治療(虫歯や歯周病が原因で歯を失ったり、咬み合わせが大きく崩れたりした際には、単に虫歯の治療や歯周病の治療だけではお口の審美や機能を回復できないことがあります。そのような場合には、一口腔単位の治療を行うことで、見た目も、咬み合わせも良好で、歯を長持ちさせることが可能となります。その目的ためにおこなわれる、歯周治療、矯正、インプラント、義歯、クラウンなど歯科のあらゆる分野の治療を駆使した治療のこと)を駆使した結果、とても美しい口腔になりました。もちろん、歯周外科もおこないました。自然観のあるクラウンと歯肉との調和にご注目ください。

以下にオペ中の写真があります。閲覧される場合にはポップアップ表示をされてください。

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3は歯周外科(フラップ手術)をしているところです。歯周病を改善するために歯肉の中側の根の表面にこびりついた汚れをきれいにするとともに、見た目を改善することを目的におこなった手術です。

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4が術前、5が術直後写真です。歯肉のスキャロップ(貝殻のような形をした歯肉の高低差)が術前・術後で変化していないことにご注目ください。術直後に歯肉のスキャロップがなくなり、歯肉が平らになってしまうと、もとに戻すことは歯周外科をすることよりも難しく、楽観的に考えることはできません。もしも、歯肉が平らになってしまうと、その後の補綴治療(ほてつちりょう・・・歯にクラウンやブリッジや義歯を入れる治療)のときに、歯が長く見えたり、歯と歯の間に大きな隙間が開いて、空隙が黒く見えたりします。このようなことになってしまうと、見た目が悪くなり、健康観を損ない、老けた印象になるばかりではなく、会話中に空気が漏れて喋りづらかったりします。大きな隙間が空けば、食べカスがつまったりします。歯ブラシだけでは十分なメンテナンスが難しくなります。そのようなことになれば、歯の寿命を延ばすためにおこなわれる治療が、却って歯の寿命を短くしてしまうかもしれません。「おおむら歯科」では、歯周外科手術(歯周病を改善するために、歯肉を開き、歯肉の中側の根面にこびりついた汚れをきれいに取る手術)の際には、このようなことを念頭に置き、できるだけ歯肉が平らにならないように、最大限の注意をはらっています。

 

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6は歯周外科から2ヶ月経ち、右上2に土台をたてたところです。4の手術前の写真と比べてください。  右上3~左上3の歯肉の位置は、手術前よりも綺麗になり、歯肉のスキャロップ(貝殻のような形をした歯肉の高低差)も整い、左上1の歯が無いところの歯肉は、同時におこなった歯槽堤増大術(歯が無くなりへこんだ歯槽堤を回復する手術)により、膨らみました。これで補綴治療をおこなう準備ができました。

 

7、8はクラウンを作製するための、右上1と左上2の模型です。何度も申し上げますが、このフィニッシュライン(支台歯の歯科医師が削った部分と削っていない部分の境界線、ここがクラウンと歯の境目・・・マージンとなる)の明瞭な模型が補綴治療の生命線であり、これがなければ、審美性と治療後の長期的な安定は望めません。おおむら歯科医院では、ご要望があれば、患者様に模型を確認していただくことが可能です。また、型を採るトレーもディスポーサブル(使い捨て)を使用していますので、型を差し上げることもできます。

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9は2017年12月11日の写真、術後14年1ヶ月後です。ほとんど何事もなく、14年が経過しました。補綴治療を不用意におこなうと頻発する、クラウン周囲の歯肉の黒ずみや炎症もありません。メンテナンスも歯ブラシだけでおこなわれています。私達としましても、この状態がさらに長く継続されることを期待して、管理させていただいております。

 

この症例は自由診療によるものですが、当医院では保険診療もおこなっております、どうぞお気軽にお声掛けください。尚、全ての症例が同じような結果になるとは限りません。治療前の病状によって術後結果も変わりますので、何か気になる点がありましたらご相談ください。

 

 

 

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