症例12 インプラントとセラミックを用いた臼歯部審美歯科治療 2年5ヶ月後

1は、2011年12月5日初診時の写真です。40代女性でご主人からのご紹介でした。インプラントとセラミックを用いて全顎的な治療をしたいという主訴でした。左上④5⑥と左下⑤6⑦のブリッジが装着されていました。左下7は虫歯が大きく、抜歯しなければなりませんでした。

2は、2015年4月30日治療終了後の写真です。左上5、左下67がインプラント、左上46、左下45がセラミッククラウンです。咬み合せもきれいに整い、審美性も獲得されました。メンテナンスも歯ブラシだけでできます。

3は、2017年9月13日、治療後2年5ヶ月の写真です。左上5はインプラントですが、左上456の歯肉がクリーピング(歯肉がクラウンに寄り添って這い上がるように移動する現象)していることが分かります。このように、マージン(クラウンと歯の境目)が見えず、歯肉もきれいな状態が長期間にわたり続くだろうと考えています。

 

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 4は、左上5のインプラントのアバットメント(インプラントにネジでとめる土台)の写真です。インプラントの治療にとっても、歯ブラシのしやすさや、審美性の観点から、歯肉のスキャロップ(貝殻のような形をした歯肉の高低差)が重要となりますが、インプラント治療において、歯肉にスキャロップを与えることは、インプラントの性質上非常に難しい治療となります。話は変わりますが、これはチタン製のアバットメントです。このような金属色のアバットメントを使うと歯肉が黒く見えるという歯科医師がいますが、それは全くの誤解です。また、メタルに裏打ちされたセラミックも歯肉が黒くなるという歯科医師がいますが、これも全くの間違いです。ジルコニアや他のオールセラミックを使っても、マージン(クラウンと歯の境目)の不適合やマージンの露出があれば、残念ながら、歯肉が赤く腫れたり、ブラックマージン(クラウンと歯肉の間に黒い線が出てしまったり、歯肉が黒っぽく変色すること)が生じます。

長期的にみれば、きちんとした治療がおこなわれた場合には、メタルセラミックの方がジルコニアよりもブラックマージンが生じることは少ないと考えています。なぜなら、ジルコニアとメタルの適合精度を比較すると、現時点では、上手な歯科技工士がおこなえば、メタルの適合精度のほうがはるかにジルコニアのそれを上回るからです。ジルコニアはあまりにも固いために、人間がバーなどの切削器具を使って削ることはできません。歯型をコンピューターで読み取り、コンピューターに接続された機械で削ることになります。大きな3Dプリンターでクラウンを削って作る、というとイメージしやすいと思います。完全なコンピューター管理なので、まあまあの精度は得られます。一方、メタルは鋳造(ちゅうぞう)という従来からある方法で、型のなかに金合金を溶かして鋳込みます。これはアナログ的な歯科技工士の手業なので、勘所やコツがあります。歯科技工士の上手い下手で精度が全く変わります。上手な技工士が鋳造をおこなえば、ジルコニアの精度とは比べ物にならないほどに支台歯(しだいし)(クラウンを入れるために削られた歯のこと)にフィットします。当然、歯肉に炎症が生じにくいですし、マージンのギャップ自体が小さいので汚れがたまりにくいために、ブラックマージンが生じることが少なくなるわけです。「最新の物が最良の物とは限らない」のは歯科の世界でも例外ではありません。クラウンの治療は精度が全てだと思っています。それがなければ、審美性、機能性、長期安定性は望めません。精度を追求しているので、当医院では歯の型にもこだわっているのです。

左上456と左下6はメタルに裏打ちされたセラミック、左下45はジルコニアに裏打ちされたセラミックですが、3の治療後2年5ヶ月の写真を見れば、どの歯が何を使ったセラミックなのか、どれがインプラントなのか、区別できないと思います。ブラックマージンの主な原因は、①歯を削る際に歯肉まで削った、②クラウンを装着後、歯肉が退縮してマージンが露出した、③様々な原因でクラウンの境目の歯肉が炎症を起こし紫色になった、などであり、メタルを使うか否かは直接関係しません。

 

5は、左下45のジルコニアに裏打ちされたセラミッククラウンを作製するための模型です。このようにフィニッシュライン(支台歯の歯科医師が削った部分と削っていない部分の境界線、ここがクラウンと歯の境目・・・マージンとなる)の明瞭な模型でクラウンを作製することが重要です。もしもこのような型が採れなければ、良好な適合が得られず、歯とクラウンの境目に歯垢などの汚れが溜まり、ブラックマージンや歯肉の炎症の原因となります。

 

6は2015年5月8日装着後1週間であり、7は2015年5月15日装着後2週間の写真です。すでにクリーピングが始まり、左上56間のエンブレージャー(歯間鼓形空隙・・・歯肉付近の歯と歯の間にある空隙。正常な歯肉にはわずかに存在する空隙であるが、あまり大きいと食べかすがつまったり、審美的にも問題となる)も小さくなっています。これはクリーピングが自然に起こっているのではなく、クリーピングするような治療をおこなっているのです。このように、クリーピングを誘導するような治療をおこなうと、将来的にも、マージン(クラウンと歯の境目)が露出して、ブラックマージンとなる可能性が極めて低くなり、審美的な状態が長期間にわたり続くことになります。2次カリエス(一度治療した歯が再び虫歯になること)になる危険性も下がります。左上5のインプラント周囲の歯肉も黒ずんでいないことが確認できます。

 

この症例は自由診療によるものですが、当医院では保険診療もおこなっております、どうぞお気軽にお声掛けください。尚、全ての症例が同じような結果になるとは限りません。治療前の病状によって術後結果も変わりますので、何か気になる点がありましたらご相談ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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