症例46 破折歯の生物学的幅径の確立と審美補綴治療

1、2

1、30代女性。左上1をお子様の頭とぶつけて折れたことを主訴に来院されました。左上1は、歯肉の縁からかなり深い位置で破折しており、歯肉から出血していました。これは、本来歯肉が持つ生物学的幅径(歯肉が歯周組織のひとつのパーツとして有する歯と付着する機能)という機能を保つことができないくらい歯肉の深い位置で破折したためです。この状態では、多くの治療を施さない限り、歯肉の健康を回復することはできません。

2、治療後の写真です。様々な治療で生物学的幅径を確立して、セラミッククラウンにより補綴治療(ほてつちりょう・・・歯にクラウンやブリッジや義歯を入れる治療)をおこないました。どの歯がクラウンなのか分からないくらい歯肉と調和した審美歯科治療がなされました。

3、4

3、歯を動かないように支えているのは、歯槽骨だけではありません。歯肉も歯にくっついて、歯を支えています。同時に、歯には歯肉の形態を維持する役目があります。歯と歯肉がくっつくためには歯槽骨から歯が出てから約2~3mmのスペースが必要とされています。この症例の左上1は、歯肉の中の深い位置で破折して、このスペースが無くなったために、炎症を起こして出血したわけです。これを生物学的幅径が侵害された状態と言います。生物学的幅径を確立させるためだけであれば、写真1の状態で手術をして歯槽骨を適量切除すれば、生物学的幅径を回復できる状態になります。しかし、歯肉の位置がかなり下がり、歯が長くなってしまいます。そのことを回避するために、このような症例では、手術に先立ち矯正的挺出(矯正力を利用して歯根周囲の歯槽骨や歯肉ごと歯冠方向へ引っ張りあげること)がおこなわれます。この写真は矯正用の輪ゴムで矯正的挺出をおこなっているところです。

4、矯正的挺出が終了したところです。左上1の歯肉の位置と形態が1、3、4と変化していく過程がお分かりいただけると思います。

5、歯冠長延長術(歯茎や歯槽骨を削る歯周外科の一種で、歯肉を少し下げて、その下にある虫歯や歯が割れている部分を歯茎の上に出す治療法のこと)をおこないました。矯正的挺出、歯周外科(歯の回りの歯肉や歯槽骨に対する手術の総称)という一連の治療により生物学的幅径が確立され、審美補綴治療をおこなうための下準備がなされたことになります。

6、歯周外科の治りを待ち、支台歯(しだいし・・・歯のない部分にブリッジや入れ歯を入れる際、支えとなる歯のこと)に土台を入れました。この時はまだ歯肉縁下(歯肉の縁よりも下の部分)に最終的なフィニッシュライン(支台歯の歯科医師が削った部分と削っていない部分の境界線、ここがクラウンと歯の境目・・・マージンとなる)を設定していません。

7、8

7、8、プロビジョナルレストレーション(仮歯のこと。治療途中で使用される一時的なもので、最終的なクラウンができるまで装着するもの。プロビジョナルレストレーションを装着しながら、見た目や機能、周りの歯や歯茎との関係などを調整し、患者様の要望に合わせて最終的なクラウンの形態の参考する)を利用して、ティッシュリテンション(クラウンが歯肉と接する部分において、歯肉の再生・成長を妨げることなく歯肉の形態を維持すること)をしました。そのためには、歯肉縁下の深い位置にフィニッシュラインを設定しなければなりません。7の写真は6と比較して歯肉の形がきれいに整ったことがお分かりいただけると思います。このようにな工程を経て、写真1の左上1破折歯が写真2のセラミッククラウンような審美歯科治療が達成されることになります。

この症例は自由診療によるものですが、当医院では保険診療もおこなっております、どうぞお気軽にお声掛けください。尚、全ての症例が同じような結果になるとは限りません。治療前の病状によって術後結果も変わりますので、何か気になる点がありましたらご相談ください。

 

 

 

 

 

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