症例44 審美性を考慮した破折歯に対する抜歯後即時インプラントとセラミック治療

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1、2017年3月10日初診、50代女性。右上1の歯肉が赤く腫れていることを主訴に来院されました。この患者様のご子息が歯科医師であり、この歯の治療ができる歯科医院を探して欲しいと頼んだところ、ご子息が当医院のホームページを見て当医院を勧められたとのことでした。初診時には、右上12と左上1がセラミッククラウンにより治療されていました。右上1の歯肉は赤く腫れ炎症をおこしており、当初は歯周病か歯根破折か診断がつかず、歯周病の治療に準じた治療をおこないました。

2、2018年7月5日の写真です。結局、右上1は歯根が破折しており、歯の長さも短かったために保存することができず、インプラントにて治療をおこないました。同時に、右上2と左上1にセラミッククラウンにて治療しなおしました。歯肉の形態や位置も揃い、ブラックトライアングル(歯と歯の間のすきまと歯肉に囲まれた部分に出来る黒くみえる三角形の空隙)も生じず、周囲の歯肉とも調和して審美歯科治療が達成されました。

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3、2017年5月1日の写真です。まずは歯周病の治療に準じて、ブラッシング指導と歯石の除去をおこないました。次に右上1のセラミッククラウンを外して、仮歯に替えてマージン(クラウンと歯の境目)を正確に合わせました。次第に歯肉の腫れと赤みは消えましたが、右上12間の歯間乳頭(歯と歯の間に位置する歯肉でピラミッド状をしている。歯間乳頭が無くなるとブラックトライアングルといわれる黒く見える空隙ができ、食片がつまったり、会話中に空気がもれたりするとともに、審美性に大きく影響することになる)が無くなって平たくなりました。これは右上1の生物学的幅径(歯肉が歯周組織のひとつのパーツとして有する歯と付着する機能)が保たれていないことを意味します。そのことを確認するために歯周外科(歯の回りの歯肉や歯槽骨に対する手術の総称)を計画しました。

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4、5、2017年5月22日、右上1は歯周外科をおこなう予定でしたが、歯根が破折しており、仮歯ごと脱落しました。これが原因で歯肉が腫れてたり、歯間乳頭が無くなったりしたわけです。

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6、歯根の状態を正確に診断するためにCT撮影をおこないました。歯根の軸は極端に内側に倒れており、クラウンの軸を補綴治療(ほてつちりょう・・・歯にクラウンやブリッジや義歯を入れる治療)で修正したために過度に力がかかり歯根が割れたものと思われます。CT撮影をしなければこの軸は分からないので致し方ないところです。また、この状態で補綴治療をおこなえば同じような結果になりますし、歯根の長さも短かったために保存できないと診断しました。患者様と相談した結果、インプラントにより治療することとしました。

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7、抜歯した右上1です。歯が斜めに割れていることが確認できます。やはりこの状態では歯を残すことは不可能でした。

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8、2017年5月29日、右上1を抜歯する直前の写真です。

9、右上1を抜歯した直後にインプラントを埋入しました。これを抜歯即時インプラント(歯を抜いたその日にインプラントを入れる方法)といいます。特にこの方法を前歯に用いると歯肉の形態がそのまま保存されて、より天然の歯に近い形のかぶせ物を入れることができます。この方法は歯肉を開かずにインプラント埋入をおこなうために、軸を見誤りやすく、術前のCTによる診断と経験が非常に重要です。

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10、11、12、2018年6月4日の写真です。右上1インプラントのオッセオインテグレーション(インプラント体の素材であるチタンが骨に結合すること)を待ち、右上2と左上1の歯肉の位置を矯正治療で揃えた後、仮歯を入れてティッシュリテンション(クラウンが歯肉と接する部分において、歯肉の再生・成長を妨げることなく歯肉の形態を維持すること)をおこない、歯肉の形態を整えました。このような複雑な工程を経て審美歯科治療が達成されるわけです。

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13、治療後のレントゲンです。インプラントの軸もまっすぐに揃っています。3本のセラミッククラウンのマージン(クラウンと歯の境目)の適合も良好です。

 

この症例は自由診療によるものですが、当医院では保険診療もおこなっております、どうぞお気軽にお声掛けください。尚、全ての症例が同じような結果になるとは限りません。治療前の病状によって術後結果も変わりますので、何か気になる点がありましたらご相談ください。

 

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