症例52 歯根破折の治療としてブリッジを用いた際に歯並びを整えた審美補綴治療

1、2、

右上1番が歯根破折し、抜歯をしなければならない状態
歯根破折の治療としてセラミックブリッジを用いて歯並びを整えた審美補綴治療を行なった。

1、2018年8月2日の写真。40代女性です。患者様は右上1がグラつくという主訴で来院されました。

右上1は歯根が割れており、抜歯をしなければならない状態でした。抜歯後の治療として、ブリッジ(一般に少数歯の欠損に対して用いる補綴物の一種である。両側の残存歯を支台歯として用い、これとポンティックを連結部で結ぶことによって作られる)による治療を希望されました。ただ、特に審美性を重視した治療を望まれていました。患者様は幼い頃からこの歯がコンプレックスで、思いっきり笑ったことがないので、笑えるようになりたいと強く希望されました。もともとの歯並びも覚えていないくらい、幼い頃の話と言われていました。当医院に来院される直前に他歯科医院を受診され、症例の呈示を求めましたが対応がなく、以前在住されていた新潟の歯科医院で当医院を紹介されたことを思い出し、当医院を受診されたとのことでした。実際に顔貌に対して歯の軸が極端に傾いており、歯と歯肉の位置が不整となっていました。当医院でおこなった類似した症例を見ていただき、治療手順を呈示して納得いただいたので治療しました。

2、2019年4月23日、治療後の写真です。

左上2は失活歯(神経がない歯、あるいは神経が死んでいる歯)であったために、支台歯(しだいし)(歯のない部分にブリッジや入れ歯を入れる際、支えとなる歯のこと)に含めました。歯の軸、形態、歯肉の位置を整えました。右上1はオベイトポンティック(ブリッジの欠損部分を補うための人工歯の基底面形態の一種であり、基底面が卵型(=ovate) を呈するものをさす。これをあらかじめ凹面に形成した顎堤粘膜に密着させることにより、 あたかも天然歯が萌出しているかのような歯頚部形態、および生理的に適度な圧迫による歯間乳頭・鼓形空隙の再生が得られる)として、あたかもそこから歯が生えているように審美性を整えました。全部の歯に対してホワイトニングをおこないました。もちろん、ブラックマージン(クラウンと歯肉の間に黒い線が出てしまったり、歯肉が 黒っぽく変色すること)や、ブラックトライアングル(歯と歯の間のすきまと歯肉に囲まれた部分に出来る黒くみえる三角形の空隙)も生じることなく、透明感のある審美的な口腔が構築されました。

3、4、

右上1番が歯根破折し、抜歯をしなければならない状態
歯根破折の治療としてセラミックブリッジを用いて歯並びを整えた審美補綴治療を行なった。

3、治療前の口元の写真です。

歯並びが悪く、思いっきり笑うことができないという患者様の訴えもうなづけます。

4、治療後の口元の写真です。

治療はスマイルライン(笑ったときに上の犬歯から反対の犬歯までの切縁の部分を結んだ線。このスマイルラインは下向きの穏やかな弓状になっている)、咬合平面(かみ合わせの面、入れ歯などが作られる際、正しいかみ合わせの基準として目安にされる、上下の歯が接する平面のこと)、そしてオーバーバイト(上下の歯を噛み合わせて、正面から見たときの上下の前歯の重なり具合)を基準にして前歯の切縁の位置を決定しました。、患者様には生まれて初めて思いっきり笑えるようになったと喜んでいただけたことは、本当に歯科医師冥利に尽きます。

5、

歯根破折している歯。

5、抜歯した右上1です。

完全に真っ二つに割れていました。こういう状態では保存することは不可能です。

6、7、8、

抜歯と同時にソケットプリザベーションを行い、審美的な仕上がりを狙う
抜歯と同時にソケットプリザベーションを行い、審美的な仕上がりを狙う(抜歯から五日後)
抜歯と同時にソケットプリザベーションを行い、審美的な仕上がりを狙う(抜歯から十日後)

6、抜歯と同時にソケットプリザベーション(骨の吸収を防止するために、抜歯の時点で人工骨などを抜歯窩に入れて骨を再生させる方法)をおこないました。

7、ソケットプリザベーションから五日目の写真です。

歯茎の状態は落ち着いてきました。

8、ソケットプリザベーションから十日目の写真です。

炎症もなく、オベイトポンティックの受け皿となる歯茎の形態ができました。

9、10、11、

印象採得した模型
印象採得した模型
印象採得した模型

9、10、11、今回使用した左上12と右上2の模型の写真です。

本ブログでいつも言及していますが、歯肉の炎症やブラックマージンの予防には、これらのようなフィニッシュライン(支台歯の歯科医師が削った部分と削っていない部分の境界線、ここがクラウンと歯の境目・・・マージンとなる)の明瞭な模型が不可欠となります。治療後の歯肉のクリーピングに関しても、マージン(クラウンと歯の境目)の適合精度が要件のひとつです。最低限これらのような模型の型を採ることができなければ、審美補綴治療とはほど遠いものとなってしまいます。

12、13、

セラミックブリッジ製作のためのフレーム。口腔内でろう着を行う。
セラミックブリッジ製作のためのフレーム。口腔内でろう着を行なっている際の写真。

12、13、特にブリッジのように強度が求められる場合には、現在セラミックの骨格にメタルかジルコニア(ジルコニアは強度と靭性をもち耐久性、耐食性、耐熱性にも優れ、製作の手間もかからず、材料代も安価であることから貴金属材料に取って代わるものとして現在注目されているセラミック)が用いられることが多いです。

しかしながら、ジルコニアはCAD/CAM(コンピュータを利用し,設計・生産を一貫して行う技法)により作製されるために、熟練した歯科技工士がおこなう従来からの貴金属鋳造法と比較して、精度的にはるかに劣ることが残念ながら現状です。そのため接着耐久性などに不安が残ります。適合不良のクラウンは歯肉の炎症やブラックマージンの原因となります。当然ジルコニアでも適合不良であればブラックマージンは生じます。メタルを使用することがブラックマージンの原因となると思われているのは、大きな間違いであり、当医院の多くのメタルを使用したセラミック症例にブラックマージンが生じていないことを見ていただければ、メタルの使用とは因果関係がないことがお分かりいただけると思います。また、型採りに使われる印象材や模型材として使われる石膏などの補綴治療(ほてつちりょう・・・歯にクラウンやブリッジや義歯を入れる治療)で用いられる全ての材料は寸法変化を起こします。その補償として、クラウンをひとつひとつ作製した上で、それらを口の中で固定してロウ着(歯冠修復においてのメタルブリッジなどを製作する際の、連結部の固定連結法のひとつで、支台装置やポンティックの金属(母合金)と組成の異なるロウ合金を融解して、母合金の間隙に流し入れ、接合させる方法)することにより精度の高いブリッジの作製が可能となります。これもメタル使用の大きな利点です。ジルコニアはワンピースで作らざるをえないために、材料の寸法変化の影響をもろに受け、ここでも適合精度に悪影響を及ぼします。

この症例は自由診療によるものですが、当医院では保険診療もおこなっております、どうぞお気軽にお声掛けください。尚、全ての症例が同じような結果になるとは限りません。治療前の病状によって術後結果も変わりますので、何か気になる点がありましたらご相談ください。

Scroll to top
ご予約、お問い合わせはこちらから
error: Content is protected !!