症例55 上顎インプラントのサイナスリフトとインプラント周囲粘膜のスキャロップ形態の構築

移転開業の遅延につきましては、患者様、関係者各位には大変ご迷惑をおかけしております。現在、工事は順調に進んでおり、近々に移転開業の日程をお知らせできると思いますので、今しばらくお待ちください。引越しの準備も大分整ったので、久しぶりに症例ブログを更新します。

1、2

歯周病と欠損がある患者、インプラント、セラミック、歯周外科を予定している。
歯周外科、上顎洞底挙上術(サイナスリフト)、インプラント、セラミックの治療を行なった。非常に審美的な仕上がりとなった。

1、2011年11月30日初診、50代男性の治療前の右側の状態です。

歯周病の治療とインプラントをしたいという主訴でした。右上3、4の歯肉付近の黒いものは歯石です。

2、右上3、4は歯周病が酷く、残念ながら抜歯せざるをえませんでした。

右上3、4、5、6と右下6はインプラントをおこないました。右上345のインプラントのクラウンはセラミック、右上6、右下6のインプラントのクラウンはセラミックだと割れやすいので、金合金を使用しました。この金属の部分は日常生活ではほとんど見えませんので、一番奥の大臼歯にはこのような方法を当院ではお勧めしています。右上3456のインプラント周囲の歯肉(本来はインプラント周囲粘膜と言いますが、患者様には分かりにくいと思いますので、今回は歯肉と表現します)はスキャロップ(貝殻のような形をした歯肉の高低差)な形態を作りました。インプラントは治療後に歯が長くなるとともに歯肉が平坦になりやすく、歯間鼓形空隙(しかんこけいくうげき・・・歯肉付近の歯と歯の間にある空隙。正常な歯肉にはわずかに存在する空隙)が大きくなる傾向があります。歯間鼓形空隙があまり大きいと食べかすがつまったり、発音や審美性にも影響するので注意が必要です。右下5はセラミッククラウンで再治療しました。機能的で審美的な口腔となりました。

3、

インプラント埋入のシミュレーションをCTで行なった。

3、2013年2月5日のCTです。

上顎の奥歯にインプラントをおこなうにあたり、解剖学的に注意しなければならないことは、上顎洞(頭蓋骨の上顎部分にある空洞で、鼻腔と通じています)が大きく、インプラントに必要な顎骨が十分でなく、そのままでは十分な長さのインプラントが埋入できない場合がままあることです。CT撮影の結果、この患者様の場合も、右上456部の顎骨は上顎洞までの距離がわずか数ミリしかないことが分かりました。(黄色矢印部分)このような場合には、サイナスリフト(上顎洞底挙上術・・・上顎の奥歯には上顎洞という空洞が存在します、インプラントを行う際に骨が十分でない場合に上顎洞底部に骨を造成する手術)がおこなわれます。

以下にオペ中の写真があります。閲覧される場合にはポップアップ表示をされてください。

4、

4、サイナスリフト(上顎洞底挙上術)は側方アプローチと歯槽頂アプローチの2種類がありますが、このように上顎洞底までの距離がほとんどない場合には、側方アプローチをおこないます。

これは、CTで上顎洞の位置や大きさを診断し上顎骨の横からアプローチする方法です。顎骨に横から穴を開け、上顎洞粘膜を剥がして持ち上げ、その空間に骨補填材を入れて骨に置換させる方法です。手術中に上顎洞粘膜に穴が開いた場合には手術を中断することがありますが、診断をしっかりおこなえば、安全な方法です。

5、

インプラント埋入、上顎洞底挙上術(サイナスリフト)を行い、CTで安全に確実に行われたことを確認した。

5、2014年12月11日のCTです。

右上456部にはサイナスリフト(上顎洞底挙上術)をおこない、インプラントを埋入しました。黄色矢印部分が骨ができてインプラントが支えられている部分です。

6、7、8、9

インプラント2次手術前の写真
インプラント2次手術直後の写真
インプラント2次手術直前の写真(側方面)
インプラント2次手術直後の写真(側方面)

6、7、8、9、インプラントが生着するのを待って、インプラント2次手術(インプラントに土台を立てて粘膜から貫通させる手術)をおこないました。

この時には、術後にインプラントのクラウンが長くならないように、歯肉が平坦にならないように、大きな歯間鼓形空隙が生じないように、そしてその結果スキャロップな形態ができるような術式を選択しなければなりません。

9、

インプラント2次手術後の写真、美しいスキャロップが構築されている。

9、インプラント2次手術によりスキャロップな歯肉は構築されましたが、右上456のインプラント周囲に十分な付着歯肉(歯と歯槽骨に付着している部分の硬くて厚い歯茎のこと。頬や唇をひっぱっても動かない可動性のない部分。抵抗力がありブラッシングや細菌などの外部からの刺激に耐えられる。抵抗がなく、可動性がある薄く柔らかい部分の歯茎は歯槽粘膜という)がありません。

今後長期的にメンテナンスをしていくことを考えれば、もう少し付着歯肉が必要です。

10、11、

インプラントの2次手術後に付着歯肉の増大を狙って、グラフト手術を行なった。
インプラントの2次手術後に付着歯肉の増大を狙って、グラフト手術を行なった。(咬合面観)

10、11、付着歯肉を獲得するために遊離歯肉移植術(上顎から固い粘膜を採取して移植する手術)をおこないました。

12、13、

インプラントとアバットメント
インプラントとアバットメントに仮歯を装着

12、13、インプラントのアバットメント(インプラントにネジでとめる土台)と仮歯です。

インプラントの埋入位置、インプラント2次手術の術式、仮歯での歯肉の調整などで歯肉のスキャロップ形態を作っていきます。インプラント周囲の粘膜のスキャロップ形態の作り方は、天然歯の補綴治療(ほてつちりょう・・・歯にクラウンやブリッジや義歯を入れる治療)の際のそれとは全く異なります。

14、15、

インプラントにセラミックを装着
インプラントにセラミックを装着から3年後

13、14、2016年12月1日治療直後と2019年11月11日治療終了約3年後の写真です。

右上3456のインプラント周囲の歯肉は天然歯の歯肉のようなスキャロップを描いていおり、3年後もほとんど変化がありません。

この症例は自由診療によるものですが、当医院では保険診療もおこなっております、どうぞお気軽にお声掛けください。尚、全ての症例が同じような結果になるとは限りません。治療前の病状によって術後結果も変わりますので、何か気になる点がありましたらご相談ください。

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