症例66 インプラント、セラミッククラウン、総義歯による審美歯科治療 

1、2

義歯 インプラント 歯周外科 矯正治療を終えた後の写真

1は2018年6月15日初診時の写真、70代の男性で、症例62の患者様からのご紹介で来院されました。

この治療は10年くらい前に他医院でおこなったということでした。仕事で講演をすることが多く、上の入れ歯が落ちて困るので適切な治療をしてほしい、という主訴でした。上顎は右上6、右上3が残存していました。右上3は根面板(歯冠を削除して歯根だけの状態にした後の根面を覆う金属板)、右上6は金属製のクラウンが装着されていました。上顎の義歯はこのクラウンに金属製のクラスプがかかっていました。下顎は右下567、右下12が欠損しており、④③21①②のブリッジ(一般に少数歯の欠損に対して用いる補綴物の一種である。主に両側の残存歯、場合によってはデンタルインプラントを支台歯として用い、これとポンティックを連結部で結ぶことによって作られる)と右下567は部分義歯によって補綴治療(ほてつちりょう・・・歯にクラウンやブリッジや義歯を入れる治療)がおこなわれていました。④③21①②のブリッジは歯肉のラインに高低差があり、審美性を損なっていました。右上6、右下34と左下67は保存することが難しく、抜歯せざるをえませんでした。

2は、2021年3月23日、治療後の写真です。

上顎は右上3の根面板を残したままで総義歯による補綴治療をおこないました。下顎は右下1234567および左下67はインプラント、左下12はセラミッククラウンによって咬合再構成(こうごうさいこうせい 、クラウン、ブリッジ、インプラント、義歯、矯正治療などを用いて、 現在の咬合を理想的な咬合に構成しなおす総合治療)をおこないました。下顎に9本ものインプラントの埋入手術がおこなわれたとは思えないほど、歯肉に傷跡もなく、歯肉のラインも整っています。患者様はご自身の治療前の口腔の状態をを忘れがちですが、この患者様も治療前と治療後の写真を見比べて、これほど機能的で審美的に変わったことをとても喜んでいただきました。

3、4、

義歯 インプラント 歯周外科 矯正治療を行う前の写真
義歯 インプラント 歯周外科 矯正治療を終えた後の写真

3は2018年6月15日初診時の上顎義歯をはずした写真です。

右上3は根面板(歯冠を削除して歯根だけの状態にした後の根面を覆う金属板)、右上6は金属製のクラウンが装着されていました。咬合平面(かみ合わせの面、入れ歯などが作られる際、正しい噛み合わせの基準として目安にされる、上下の歯が接する平面のこと)が整っていないことがわかります。右下12はポンティック(ブリッジにおける欠損部を補うために支台装置(両脇の土台となっている歯)に連結される人工歯)ですが、粘膜の上にのっており食べカスがつまりやすく、歯の形態や長さも不整で清掃性や審美性が損なわれています。

4は治療後の写真です。

右下1234567、左下67はインプラント、左下12はセラミッククラウンです。咬合平面や歯肉の位置を整えることを念頭におき治療をおこないました。歯肉にも炎症はなく、自然観のある治療がおこなわれました。

5、6、7、8、

義歯 インプラント 歯周外科 矯正治療を行う前の写真
義歯 インプラント 歯周外科 矯正治療を終えた後の写真 側方面観
義歯 インプラント 歯周外科 矯正治療を行う前の写真
義歯 インプラント 歯周外科 矯正治療を終えた後の写真

5、6は治療前、治療後の右側方観です。

噛み合わせも良好になりました。咬合平面(かみ合わせの面、入れ歯などが作られる際、正しい噛み合わせの基準として目安にされる、上下の歯が接する平面のこと)の変化に注目してください。このことも義歯の安定に関わる一つの重要な要素です。

7、8は治療前、治療後の上顎義歯をはずした時の右側方観です。

治療前は歯がない右下567部の顎の骨がかなり吸収して低くなっています。このような顎骨の吸収は不適合な義歯を長期間にわたり使用した際に見られることが多いです。このような状態では機能的にも審美的にも満足できるインプラント治療はできないので、歯槽堤の高さを増すために歯槽堤増大術(歯が無くなりへこんだ歯槽堤を回復する手術)を併用しました。歯槽堤増大術の方法についてはここでは触れませんが、7~8mmほど歯槽堤の高さを増大した結果、咬合平面と歯肉の位置を整えることができました。

9、10、11、12、

義歯 インプラント 歯周外科 矯正治療を行う前の写真
義歯 インプラント 歯周外科 矯正治療を終えた後の写真
義歯 インプラント 歯周外科 矯正治療を行う前の写真
義歯 インプラント 歯周外科 矯正治療を終えた後の写真

9、10は治療前、治療後の左側方観です。

左下67はインプラントです。治療前は左下45に入れ歯のクラスプがかかっていました。このような設計では歯周病を助長してしまいます。

11、12は治療前、治療後の上顎義歯をはずした時の左側方観です。左下345は天然歯ですが、治療前は歯周病にかかっており、歯肉が下がっており、大きな歯間鼓形空隙(歯肉付近の歯と歯の間にある空隙。正常な歯肉にはわずかに存在する空隙であるが、あまり大きいと食べかすがつまったり、審美的にも問題となる)が空いていました。

13、14、

義歯 インプラント 歯周外科 矯正治療を行う前の写真
義歯 インプラント 歯周外科 矯正治療を終えた後の写真

13は治療前の左下345の写真です。

歯周病にかかっており、歯肉がかなり下がっています。左下34間には大きな歯間鼓形空隙(歯肉付近の歯と歯の間にある空隙。正常な歯肉にはわずかに存在する空隙であるが、あまり大きいと食べかすがつまったり、審美的にも問題となる)が空いおり、清掃性と審美性が阻害されていました。

14、この部位には歯周再生療法(歯周病で溶けてしまった顎の骨や歯根膜などの歯周組織を再生させる治療)をおこない歯肉のスキャロップ(貝殻のような形をした歯肉の高低差)を再構築して清掃性と審美性の向上を測りました。

15、16、17、18、

義歯 インプラント 歯周外科 矯正治療を行う前の写真
義歯 インプラント 歯周外科 矯正治療を終えた後の写真
セラミック冠の為の支台歯形成
下顎前歯インプラント手術後の写真

15、16治療前後の下顎前歯部の比較です。

17は右下123にインプラントと歯槽堤増大術(歯が無くなりへこんだ歯槽堤を回復する手術)をおこなう直前の写真です。右下123相当部の歯肉が斜めに下がっていることが確認できます。このままでインプラントをしても15の写真のような歯並びにしかなりません。

18、16の写真のような歯並びにするためにインプラント埋入手術と同時に歯槽堤増大術をおこないました。歯肉の高さと幅がかなり増していることがわかります。

19、20、21、22、

インプラント手術後、セラミック冠 圧排の写真
インプラント手術後、セラミック冠 圧排の写真
インプラント手術後、セラミック冠 圧排の写真
インプラント手術後、セラミック冠 圧排の写真

19、20、21、22、左下12のセラミッククラウンのための歯肉圧排(歯肉と歯の境目をだすために、その隙間に糸を入れて一時的に歯肉を広げること)と明瞭なフィニッシュライン(支台歯の歯科医師が削った部分と削っていない部分の境界線、ここがクラウンと歯の境目・・・マージンとなる)が再現された模型です。

補綴治療においては、どこまで精度にこだわるかが成否を分けます。このような模型で歯科技工をおこなわなければ炎症や黒ずみのない自然観のある歯肉と調和したクラウンを入れることはできません。この手作業でおこなう印象採得(型を採ること)は熟練を要し手間暇がかかります。口腔内スキャナー(口腔内を小型カメラで撮影し、そのデータをもとにコンピュータを介して立体画像を再現し、モニター上に映し出す装置)でおこなわれる印象採得は誰でも簡単に印象採得ができるとメーカーは謳っていますが、このような歯肉縁下(歯肉の縁よりも下の部分)にフィニッシュラインを設定しなければならない審美治療においては、残念ながらどのメーカーもフィニッシュラインを明瞭に再現することが全くできず、審美補綴治療には使うことができないのが現状です。

この症例は自由診療によるものですが、当医院では保険診療もおこなっております、どうぞお気軽にお声掛けください。尚、全ての症例が同じような結果になるとは限りません。治療前の病状によって術後結果も変わりますので、何か気になる点がありましたらご相談ください。

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