症例68 深い虫歯を保存するためにおこなわれる矯正的挺出、歯冠延長術と その後の審美補綴治療

1、2、

セラミック 矯正的挺出 歯周外科手術 等の治療を行なった後の写真

1、2020年6月8日初診、40代男性、右上2がズキズキ痛むという主訴で来院されました。

以前に神経をとった治療から根に細菌が感染して、根に炎症を起こして痛みがでる病気(根尖性歯周炎)を起こしていることが原因でした。写真は2020年12月15日の写真で根尖性歯周炎の治療を終えた状態です。補綴治療(ほてつちりょう・・・歯にクラウンやブリッジや義歯を入れる治療)をしなければいけませんが、右上2は虫歯が深く、このままでは、クラウンのマージン(クラウンと歯の境目)を精密に合わせることができない状況です。このままの状態で無理やり補綴治療をおこなえば、見た目を綺麗にするどころではなく、早期に虫歯が再発して、最後には歯を残す治療法がなくなり、歯を抜かなければならないことになります。この時、左上123にも補綴治療がおこなわれていましたが、患者様はそれらの再治療を含めて、とても綺麗に治療することを希望されました。

2、2021年4月28日、治療後の写真です。

右上2の矯正的挺出(矯正力を利用して歯根周囲の歯槽骨や歯肉ごと歯冠方向へ引っ張りあげること)および歯冠延長術(歯茎や歯槽骨を削る歯周外科の一種で、歯肉を少し下げて、その下にある虫歯や歯が割れている部分を歯茎の上に出す治療法のこと)およびホワイトニングをおこなった後に、右上2、左上123をセラミッククラウンにて再治療しました。歯肉の連続性や歯肉のスキャロップ(貝殻のような形をした歯肉の高低差)も整い、どの歯がクラウンなのかわからないほど審美的な治療がおこなわれ、患者様にはとても喜んでいただきました。歯肉にメラニン色素(メラニン色素による歯肉の黒ずみ・色素沈着)が沈着していますが、これは後々除去予定です。その時はもう一度写真をブログにアップします。

3、4、

セラミック 矯正的挺出 歯周外科手術 等の治療を行なう前の写真
セラミック 矯正的挺出 歯周外科手術 等の治療を行なう前の写真

3、4、右上2が歯肉の奥深いところまで虫歯になっていました。

こういう状況は一般的にはC4と呼ばれ、抜歯となります。しかし、矯正的挺出(矯正力を利用して歯根周囲の歯槽骨や歯肉ごと歯冠方向へ引っ張りあげること)をしてから、後に歯冠長延長術(歯茎や歯槽骨を削る歯周外科の一種で、歯肉を少し下げて、その下にある虫歯や歯が割れている部分を歯茎の上に出す治療法のこと)をおこなえば、歯を残せる場合があります。

5、6、

矯正的挺出を行なっている写真
矯正的挺出を行なっている写真

5、2020年12月15日、ワイヤーと矯正用ゴムを使用して矯正的挺出を開始しました。

6、矯正的挺出の期間には、シェル状の仮歯を接着して少しでも見た目をよくしています。

7、8、

矯正的挺出を行い、歯冠部が少し萌出した写真
矯正的挺出を行い、歯が少し萌出した写真の咬合面観

7、8、2021年1月8日、矯正的挺出から23日後の写真です。

3、4、の写真と比較してして歯が歯肉と一緒に伸びていることが分かります。矯正的挺出をする理由は、歯冠延長術(歯茎や歯槽骨を削る歯周外科の一種で、歯肉を少し下げて、その下にある虫歯や歯が割れている部分を歯茎の上に出す治療法のこと)をおこなえば、手術の後には歯肉が退縮して下り、隣同士の歯の歯肉の連続性や歯肉のスキャロップ(貝殻のような形をした歯肉の高低差)が乱れて、とても見た目が悪くなるので、あらかじめ補償しておくためです。

以下にオペ中の写真があります。閲覧される場合にはポップアップ表示をされてください

9、

9、2021年1月8日、歯冠延長術(歯茎や歯槽骨を削る歯周外科の一種で、歯肉を少し下げて、その下にある虫歯や歯が割れている部分を歯茎の上に出す治療法のこと)をおこない、歯が生物学的幅径(歯肉が歯周組織のひとつのパーツとして有する歯と付着する機能)を再確立できる条件を整えました。これで歯肉は健康を回復して、精度の高い補綴治療をおこなうために必要不可欠な歯肉圧排(歯肉と歯の境目をだすために、その隙間に糸を入れて一時的に歯肉を広げること)に耐えうる歯肉になります。

10、11、12、

セラミックを用いた治療の為に、圧排し印象採得を行う写真
シリコン印象材を用いて印象採得を行なった写真
セラミック冠を用いた治療を行う為に印象採得し、模型に起こした写真

10、右上2の歯肉圧排(歯肉と歯の境目をだすために、その隙間に糸を入れて一時的に歯肉を広げること)をおこなった際の写真です。

青い糸が虫歯のない歯質を取り囲んで、フィニッシュライン(支台歯の歯科医師が削った部分と削っていない部分の境界線、ここがクラウンと歯の境目・・・マージンとなる)が明瞭になっていることが分かります。これは、歯冠延長術により生物学的幅径が再構築された証拠です。

11、12、精密印象とそれにより得られた模型です。

この精密な模型を用いて歯肉に炎症や黒ずみのない審美補綴治療が可能となるわけです。左上123においても同様の治療がおこなわれます。

13、14、

セラミック 矯正的挺出 歯周外科手術 等の治療を行なった後の写真

13、14、治療前後の右上2の写真です。

矯正治療や歯周外科がおこなわれたと思えないほど綺麗な歯と歯肉になりました。

15、16、

セラミック 矯正的挺出 歯周外科手術 等の治療を行なう前の写真
セラミック 矯正的挺出 歯周外科手術 等の治療を行なった後の写真

15、16、治療前後の左上123の写真です。

左上1のブラックマージン(クラウンと歯肉の間に黒い線が出てしまったり、歯肉が 黒っぽく変色すること)は治療により改善されました。15の写真の左上3の歯肉が黒いのはブラックマージンではなく、メタルタトゥー(歯茎に金属が刺さり沈着して黒い刺青みたいになること)と呼ばれるものです。これは、金属が歯肉に巻き込まれた結果、起こったものです。16の写真でもメタルタトゥーが見えますが、残念ながらこれは補綴治療だけで改善することができないためです。

この症例は自由診療によるものですが、当医院では保険診療もおこなっております、どうぞお気軽にお声掛けください。尚、全ての症例が同じような結果になるとは限りません。治療前の病状によって術後結果も変わりますので、何か気になる点がありましたらご相談ください。

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