The審美歯周補綴
1、2、
1、2018年11月14日初診、北九州市小倉在住の50代男性です。
長年地元の歯科医院にて治療とメンテナンスを受けられていましたが、経過が思わしくなく、歯周病がどんどん悪くなっていくという自覚があったものの、積極的な治療をしてもらえずに悩んでいたところ、当医院の北九州市小倉在住の患者様からの紹介で来院されました。歯が動くこと、歯ぐきから出血すること、見た目が悪いこと、そして、このままでは歯を失うことになるのではないかという不安を抱えていらっしゃいました。左上1は動揺が著しく隣接する歯と接着剤でとめられていました。歯間鼓形空隙(歯肉付近の歯と歯の間にある空隙。正常な歯肉にはわずかに存在する空隙であるが、あまり大きいと食べかすがつまったり、審美的にも問題となる)まで接着剤が流れ込んでおり、これではいくら歯磨きをしてもプラークを取り去ることができません。逆に右上12間は大きな歯間鼓形空隙が開いており、歯ブラシだけではプラークコントロールが難しそうです。
2、2021年4月8日の治療終了後の写真です。
歯周病の治療の一環として歯周治療、上下顎の矯正治療、インプラントとセラミッククラウンを用いた歯周補綴(支台歯の支持骨の吸収が大きく、動揺度が増加し、クラウンにより連結しなければ、正常な咀嚼機能が営めない状態に対して、歯周環境の整備、安定した咬合、咀嚼機能の回復を図る総合的治療のこと)をおこないました。歯周病の治療をおこなうと歯根が露出して細長い歯になったり、大きな歯間鼓形空隙(歯肉付近の歯と歯の間にある空隙。正常な歯肉にはわずかに存在する空隙であるが、あまり大きいと食べかすがつまったり、審美的にも問題となる)が開いたりすることが多いのですが、当医院ではそれらのことを注意して治療をおこないます。ホワイトニングなどもおこないました。治療前の状態が想像できないほどきれいで清潔感のある口腔になりました。
3、4、
3、初診時のレントゲンです。
全体的に歯周病が進行していました。接着剤でとめられていた左上1は歯根が吸収しており、保存できそうにありません。右上6、左上6、右下6、左下7には根分岐部病変(上下大臼歯は、2~3本の根をもっている、歯周病が進行して歯槽骨が根の分かれ目まで吸収し、組織破壊が達した状態)があり、歯周外科など最新の技術を駆使しても良好な条件で保存できるかどうか分からないくらい歯周病が進行していました。右上7⑥⑤のブリッジはカンチレバー(日本語では片持ち梁(はり=横木)のことで、横木の一端が固定してあり、他端が自由な状態である。そして歯科領域では、カンチレバーブリッジと呼称される場面で使用される。「ひとつあるいはそれ以上の片側支台歯で支えているブリッジのこと」としており、「延長ブリッジ」とも呼ぶ。通常のブリッジはポンティックの両側に支台装置があるが、カンチレバーブリッジだと片側にしか支台装置がなく、力学的に考えて不利な点が多い。例えば、ポンティックにいちばん近い支台歯⑤⑥7では⑥は支点となり、過度の負荷が加わる。そのため、歯根破折や二次カリエスなどの危険が高まる。ゆえにカンチレバーブリッジの経過には不安が伴うのでこれを臨床応用する際は十分な注意が必要となる)となっており、このブリッジは、特に歯周病に罹患している歯には不適切な設計であり、右上6の骨吸収をより促したのかもしれません。
4、治療後のレントゲンです。
歯周病は安定しています。右上67、左上6、左下7、右下7はインプラント、右上5、右下56はセラミッククラウン、上顎③②①1②③はセラミックのブリッジで治療しました。クラウンのフィットも非常に良好なものとなっています。
5、6、
5、6、治療前後の軽く口を開いた状態です。
上下の歯並びに注目してください。治療後は歯周病だったのかどうかも分からないくらいきれいになりました。右上67、左上6、左下7、右下7はインプラントで治療しました。左上1は抜歯して、右上321、左上23を支台歯(しだいし・・・歯のない部分にブリッジや入れ歯を入れる際、支えとなる歯のこと)としたセラミックブリッジにより治療しました。
7、8、9、
7、8、9、矯正治療の経過です。
矯正治療に先立ち、必ず歯周病治療を先行して、歯周病を安定させておかなければなりません。さもないと、歯周病の歯に矯正力がかかると骨吸収が一気に進行してしまいます。今回は下顎から先に矯正を始めました。下顎がある程度並んだ後に上顎の矯正を始めました。上顎の矯正が終わり、上顎前歯を仮歯にかえて、最終的に下顎の歯を出来るだけきれいに並べました。
10、11、
10、11、治療前後の右側方観です。
治療前は上顎前歯が出っ歯ですが、治療により綺麗な歯軸に修正しました。治療前の右下4(下顎右側第一小臼歯)は歯列からはみ出し、右上4とうまく咬みあっていませんが、治療後は正常な咬み合わせに仕上げました。右上5および右下56はセラミッククラウン、右上67、右下7はインプラントです。治療後は咬み合わせが良好になり、歯ぐきからの出血もなく、歯の動きも止まり、美味しく食事ができるようになりました。
12、13、
12、13、治療前後の左側方観です。
左上6、左下7はインプラントです。治療後に左上45間に大きな歯間鼓形空隙(歯肉付近の歯と歯の間にある空隙。正常な歯肉にはわずかに存在する空隙であるが、あまり大きいと食べかすがつまったり、審美的にも問題となる)が生じています。これは初診時にすでに歯周病が進行していたので、左上5の歯周ポケット(歯と歯茎の間にある隙間で1~3mmが正常範囲で、その歯周ポケットには、食事をした際の食べカスや歯周病などの原因になる細菌が入ってしまうことがあり、あまり深くなると抜歯になることがある)が7mmもあり、治療後には歯周ポケットが3mmと正常になったために、歯ぐきが引き締まった結果であり、残念ですが仕方がありません。もう少し早くに治療がおこなわれていればこんなに歯ぐきが退縮することはありません。
14、15、
14、15、治療前後の上顎咬合面観です。
治療前は、右上2、左上1は外側に振り、右上3は内側に振っていることにより、歯列のアーチが乱れています。治療後は矯正治療と補綴治療(ほてつちりょう・・・歯にクラウンやブリッジや義歯を入れる治療)により歯列のアーチをきれいに整えました。治療前の右上567のクラウンの咬合面は非常に平坦であり、咀嚼効率は悪いです。噛み切れが悪いために、無理やり噛もうとすれば歯に異常な力がかかり、骨吸収を加速させるという悪影響が生じます。治療後は天然歯に似た咬合面形態を与えて噛み切れを良好なものにして、歯を支える骨の安定を考慮しています。
16、17、
16、17、治療前後の下顎咬合面観です。
治療前は、左下2~右下4の歯並びが叢生(そうせい・・・「乱杭歯、らんぐいば」と呼ばれ、歯が重なり合ってデコボコした状態の歯並びのこと)であり、見た目が悪く、歯も磨きにくいので、歯周病を増悪させる要因となっています。治療後は矯正治療と補綴治療(ほてつちりょう・・・歯にクラウンやブリッジや義歯を入れる治療)により歯列のアーチをきれいに整えました。治療前の右下567のクラウンおよび左下7の銀歯の咬合面は非常に平坦であり、咀嚼効率は悪いです。噛み切れが悪いために、無理やり噛もうとすれば歯に異常な力がかか理、骨吸収を加速させるという悪影響が生じます。治療後は天然歯に似た咬合面形態を与えて噛み切れを良好なものにして、歯を支える骨の安定を考慮しています。
18、19、20、
18、19、20、初診時、歯周基本治療(ブラッシングや歯石除去などで歯周疾患の原因を取り除き、可能な限り細菌などの感染源に侵されない口腔内環境を作りだす処置のことをいう。また、歯周外科手術に先立ち、手術のリスクを低くするために行われることもある)時、治療終了時の前歯部の比較です。
初診時の接着剤を取り去った後の歯周基本治療の写真を見ると、歯周病で歯ぐきが退縮して審美性を悪くしている状態や歯並びの悪さが分かります。治療後には同じ口腔とは思えないほどきれいな口元になりました。左上1は抜歯して歯を失いましたが、歯槽堤(歯が無くなって歯肉だけになった部分。歯が無くなった部分の顎の骨は時間の経過とともに、少しずつ吸収するので、歯槽堤は歯が存在していた時に比べて必ず幅が細くなる)にはオベイトポンティック(ブリッジの欠損部分を補うための人工歯の基底面形態の一種であり、基底面が卵型(=ovate) を呈するものをさす。これをあらかじめ凹面に形成した顎堤粘膜に密着させることにより、 あたかも天然歯が萌出しているかのような歯頚部形態、および生理的に適度な圧迫による歯間乳頭・鼓形空隙の再生が得られる)として、いかにも歯が生えているように形作っています。ただ歯を白くするだけではなく、このような治療が審美歯科治療と呼ばれるものです。
21、22、23、
21、22、23、初診時、歯周基本治療(ブラッシングや歯石除去などで歯周疾患の原因を取り除き、可能な限り細菌などの感染源に侵されない口腔内環境を作りだす処置のことをいう。また、歯周外科手術に先立ち、手術のリスクを低くするために行われることもある)時、治療終了時の下顎前歯部の比較です。
初診時の接着剤を取り去った後の歯周基本治療の写真を見ると、歯周病で歯ぐきが退縮して審美性を悪くしている状態や歯並びの悪さが分かります。下顎前歯部はクラウンなどを被せるのではなく、全て天然歯で審美性は矯正治療だけでおこないましたが、治療後には同じ口腔とは思えないほどきれいな口元になりました。