上顎前歯部の審美補綴治療
1、2、
1、2021 年3月13日初診、50代女性です。歯を綺麗にしたいという主訴でした。
前々から上顎前歯のブラックマージン(クラウンと歯肉の間に黒い線が出てしまったり、歯肉が 黒っぽく変色すること)が気になっていたとのことで、今回、右上321、左上12の補綴治療((ほてつちりょう・・・歯にクラウンやブリッジや義歯を入れる治療)をやり直すことになりました。かなり前に治療をしたようで、右上2、左上12はマージン(クラウンと歯の境目)付近が2次カリエス(一度治療した歯が再び虫歯になること)になり、コンポジットレジン(樹脂製の歯の修復用素材)が詰められていました。患者様はこのような状態をかなり以前から気にされていたようです。
2、2022年9月29日の治療終了後13日目の写真です。
ブラックマージンはもちろん、歯間鼓形空隙(歯肉付近の歯と歯の間にある空隙。正常な歯肉にはわずかに存在する空隙であるが、あまり大きいと食べかすがつまったり、審美的にも問題となる)も考慮して審美補綴治療をおこないました。ホワイトニングをおこなった後に補綴治療((ほてつちりょう・・・歯にクラウンやブリッジや義歯を入れる治療)をおこないました。いかにも被せましたというようなクラウンではなく、天然歯と見間違うような自然観のある色調と形態を再現しました。
3、4、5、6、
3、4は治療前、5、6は治療後の側方観です。
クラウンと歯肉との調和もさることながら、クラウンの形態に注目してください。天然歯は決して丸い訳ではなく、直線と曲線、平面と曲面が融合したシャープな形態をしています。できる限り天然歯の形態を模倣した結果、光の反射が複雑になり、キラキラと輝いています。治療前後を比較してください。
7、8、
7、8、左上21、右上123のクラウンの形態を全周で示します。
マージン(クラウンと歯の境目)、歯肉縁下(歯肉の縁よりも下の部分)、歯肉縁上(歯肉の縁よりも上の部分)とエマージェンスプロファイル(歯肉を貫通するところの歯あるいはクラウンの形態)の融合に注目してください。これらの3次元的な形態をクラウンカントゥアと呼びます。
9、10、11、12、13、
9、10、11、12、13、支台歯(しだいし)(歯のない部分にブリッジや入れ歯を入れる際、支えとなる歯のこと)模型を示します。
クラウンカントゥアの出発点がマージン(クラウンと歯の境目)となります。そのため、フィニッシュライン((支台歯の歯科医師が削った部分と削っていない部分の境界線、ここがクラウンと歯の境目・・・マージンとなる)が明瞭な模型でないかぎり良好なクラウンカントゥアは望むべくもありません。歯科医師が歯科技工士に手渡す情報の中でこれらの作業模型が最も重要なものの一つとなりますが、歯科医師がおこなう歯肉縁下(歯肉の縁よりも下の部分)の精密な印象採得(型を採ること)は非常に難しい治療となります。