1、2、
1、2019年1月21日の初診時の写真。
30代女性です。上顎11の硬質レジン前装冠(歯科で提供されている差し歯の一種。硬質レジンは樹脂の一種で、プラスチックのような性質を持つ。前歯部では保険適用できる。吸水性があり、金属とは接着しない。また、セラミックと比較して、透明度、耐摩耗性、耐変色性に劣る)をセラミックで綺麗にやり直したいという要望でした。硬質レジンの性質上、2本のクラウンには透明感がありませんでした。2本のクラウンは中央部で重なり、段差がある状態でした。
2、2019年5月13日、治療後約1ヶ月の写真です。
上顎11に対してセラミッククラウンの治療をおこないました。歯の軸や形態も整い段差もなくなり、同時にホワイトニングと歯肉のメラニン色素除去(メラニン色素による歯肉の黒ずみ・色素沈着を取ること)もおこないましたので、透明感のある審美的な口腔が構築されました。
3、4、
3、治療前の右上1の側方観です。
右上12間にはブラックトライアングル(歯と歯の間のすきまと歯肉に囲まれた部分に出来る黒くみえる三角形の空隙)が生じて食べ物が詰まりやすく、同時に審美性が損なわれた状態でした。
4、治療後の側方観です。
右上2はコンポジットレジン(樹脂製の歯の修復用素材)により歯の形態を整えた後に、右上1はセラミッククラウンによりクラウンの再治療をおこないました。歯肉のスキャロップ(貝殻のような形をした歯肉の高低差)は整い、ブラックトライアングルも消失して、清掃性と審美性が向上しました。
5、6、
5、治療前の左上1の側方観です。
左上1は、右上1・左上2と比較して段差があり、出っ歯になっていました。材料が硬質レジンのために透明感がなく、色調も不自然でした。
6、治療後の左上1です。
左上2はコンポジットレジンにより歯の形態を整えました。セラミッククラウンにより補綴治療(ほてつちりょう・・・歯にクラウンやブリッジや義歯を入れる治療)をおこないましたので、歯の色調や透明感も整いました。
7、8、
7、8、上顎11の歯肉圧排(歯肉と歯の境目をだすために、その隙間に糸を入れて一時的に歯肉を広げること)と型です。
治療後にクラウンのマージン(クラウンと歯の境目)が歯肉から見えて審美性を損なわないように、歯肉縁下(歯肉の縁よりも下の部分)のかなり深い位置まで支台歯形成(クラウンを入れるために歯を削ること、海外ではpreparation-準備といわれ、クラウンを入れる準備をすることとされている)がおこなわれます。このような方法は歯肉を傷つけてはならないために、支台歯形成や印象採得(型を採ること)の難度が大幅に増します。フィニッシュライン(支台歯の歯科医師が削った部分と削っていない部分の境界線、ここがクラウンと歯の境目・・・マージンとなる)の型が取れないからといって、無理やり歯肉圧排をおこなうと、歯肉退縮を起こし、マージン(クラウンと歯の境目)が露出する原因となり、逆に審美性が損なわれます。
9、10、
9、10、このようなフィニッシュライン(支台歯の歯科医師が削った部分と削っていない部分の境界線、ここがクラウンと歯の境目・・・マージンとなる)の明瞭な模型が審美歯科治療には不可欠です。
なぜならマージン(クラウンと歯の境目)の不適合が歯肉の炎症やブラックマージンの原因となり、審美性を損なうからです。このような基本的治療を忠実におこなわれなければ、審美歯科治療は達成されないと言っても過言ではありません。