1、2、3
1、2の写真は、2003年1月29日初診で40代女性でした。左上②③4⑤のブリッジ(一般に少数歯の欠損に対して用いる補綴物の一種である。主に両側の残存歯、場合によってはデンタルインプラントを支台歯として用い、これとダミーを連結部で結ぶことによって作られる)が外れて落ちたという、という主訴でした。左上235全てが歯肉の奥深いところまで虫歯になっており、虫歯を取ると歯が歯肉の中に埋もれる状態でした。こういう状況は一般的にはC4と呼ばれ、抜歯となります。しかし、矯正的挺出(矯正力を利用して歯根周囲の歯槽骨や歯肉ごと歯冠方向へ引っ張りあげること)をしてから、後に歯冠長延長術(しかんちょうえんちょうじゅつ)(歯茎や歯槽骨を削る歯周外科の一種で、歯肉を少し下げて、その下にある虫歯や歯が割れている部分を歯茎の上に出す治療法のこと)をおこなえば、歯を残せる場合があります。これを「残根」の治療と言います。
3は、2007年6月2日、治療後2ヶ月の写真です。歯を保存できただけではなく、歯肉の位置や歯肉のスキャロップ(貝殻のような形をした歯肉の高低差)も整い、機能的で審美的な歯科治療がなされました。もちろん、ブラックマージン(クラウンと歯肉の間に黒い線が出てしまったり、歯肉が 黒っぽく変色すること)もありません。前歯のクラウンはオールセラミッククラウン、左上4567はインプラントをおこないました。
4
4、矯正用の輪ゴムを用いて、矯正的挺出をおこないました。虫歯を歯肉の上側に出すことと、最終的な歯肉の位置とスキャロップを整えるために、約3mmほど歯を引っ張りあげました。歯肉が引っ張りあげられているのが、お分りいただけると思います。
以下にオペ中の写真があります。閲覧される場合にはポップアップ表示をされてください。
5、6
5、矯正的挺出開始から26日目に歯冠長延長術をおこないました。歯肉とともに、歯槽骨も引っ張りあげられていることがお分りいただけると思います。
6、この歯槽骨を整形して、歯肉の上に健全歯質が顔を出すようにするわけです。この一連の治療が上手くおこなわれた結果、3の写真のような審美歯科治療が達成されます。
7
7は、左上3のクラウン用の模型です。石膏模型ですが、歯と周りの歯肉の境目が明確に区別できます。このように歯を削り、このような型を採ることは、毎日おこなわれている歯科治療の基本中の基本と思われるかもしれませんが、実際には、最も難しい治療のひとつに数えられます。この精度の高い模型が審美歯科をおこなうための基本となります。
8
8は2015年4月1日、クラウン装着から8年後の写真です。12年2ヶ月前には抜歯しても不思議ではなかった左上2、3がまるで何もなっかかのように、美しい状態で保たれています。歯肉の位置や形も安定して、ブラックマージンも生じていません。さらに長く安定するものと思われます。
この症例は自由診療によるものですが、当医院では保険診療もおこなっております、どうぞお気軽にお声掛けください。尚、全ての症例が同じような結果になるとは限りません。治療前の病状によって術後結果も変わりますので、何か気になる点がありましたらご相談ください。