1、2、3
1の写真は、2013年1月25日初診、40代女性。前歯をきれいにしたい、という主訴でした。上顎右上3、左上1が欠損で、④②①1②③のブリッジ(一般に少数歯の欠損に対して用いる補綴物の一種である。主に両側の残存歯、場合によってはデンタルインプラントを支台歯として用い、これとポンティックを連結部で結ぶことによって作られる)が装着されていました。歯と歯の間に大きな空隙があり、会話中に空気が漏れたり、審美的にも大きな問題でした。
2は、2014年1月10日、④②① 1②③のブリッジを装着して1ヶ月後の写真です。左上1のポンティック(ブリッジにおける欠損部を補うために支台装置(両脇の土台となっている歯)に連結される人工歯)は、オベイトポンティック(ブリッジの欠損部分を補うための人工歯の基底面形態の一種であり、基底面が卵型(=ovate) を呈するものをさす。これをあらかじめ凹面に形成した顎堤粘膜に密着させることにより、 あたかも天然歯が萌出しているかのような歯頚部形態、および生理的に適度な圧迫による歯間乳頭・鼓形空隙の再生が得られる)であたかも歯が生えているような自然観をだしました。右上4は右上3の形態にして、6本の前歯を美しく並べました。これが審美歯科の醍醐味です。初診時にあった歯と歯の間の空隙は、クラウンのエマージェンスプロファイル(歯肉を貫通するところの歯あるいはクラウンの形態)を調整して意図的に歯肉をクリーピング(歯肉がクラウンに寄り添って這い上がるように移動する現象)させました。
3は、2016年5月31日、治療後2年5ヶ月後の写真です。歯肉はさらにクリーピングして、11間のエンブレージャー(歯間鼓形空隙・・・歯肉付近の歯と歯の間にある空隙。正常な歯肉にはわずかに存在する空隙であるが、あまり大きいと食べかすがつまったり、審美的にも問題となる)がちょうど良いくらいに閉鎖しました。左上1のオベイトポンティックにもさらに歯肉が寄り添ってきました。
4、5、6
4、5、は装着前のセラミックブリッジです。天然歯の解剖学的形態を捉えた自然観のある形態にご注目ください。マージン(クラウンと歯の境目)からの立ち上がりの部分がエマージェンスプロファイル(歯肉を貫通するところの歯あるいはクラウンの形態)です。患者様には分からないかもしれませんが、これがクリーピングを誘うエマージェンスプロファイルなのです。このセラミックスは、日本でも屈指の歯科技工士である、木村好秀氏(大阪在住)によるものです。本ブログ全てのクラウン・ブリッジは木村好秀氏が手掛けたものです。下関おおむら歯科医院院長の大村祐進とは、20年以上共に仕事をしてきた仲で、最も信頼している歯科技工士です。「オオムラメソッド」セミナーでは、同伴歯科技工士の指導を担当していただいております。
6はブリッジの装着前に少しだけ浮かせた状態の写真です。歯肉とクラウンの形が全く同一であることがお分かりいただけるものと思います。このことをティッシュリテンション(クラウンが歯肉と接する部分において、歯肉の再生・成長を妨げることなく歯肉の形態を維持すること)と呼びます。ティッシュリテンションは歯肉のクリーピングの要件のひとつです。
7、8
7、8 歯科医師や歯科技工士は、これらの模型の写真を見るだけで、その歯科医師の補綴治療に対する技術や考え方が分かります。マージン(クラウンと歯の境目)が明確な模型を得るために、支台歯形成(クラウンを入れるために歯を削ること、海外ではpreparation-準備といわれ、クラウンを入れる準備をすることとされている)や印象採得(型を採ること)を精密におこなうことは、それほど難しいのです。歯科学会などでプレゼンテーションをする際に、これらのような模型の写真を呈示するだけで、非常に高い評価を得られるのはそのためです。
9、10
9、10は、左上1のオベイトポンティックの側方観です。あたかも歯肉から萌えているように見えます。歯肉がセラミッククラウンにまとわりついています。審美歯科とは、単に歯を白くするだけではありません。クラウンと歯肉の自然観のある調和をだすことがこの症例に審美性を付与するための重要な要素になります。
11
11は、2017年8月1日、ブリッジ装着から3年7ヶ月後の写真です。歯肉の退縮もなく、審美歯科が達成されています。
この症例は自由診療によるものですが、当医院では保険診療もおこなっております、どうぞお気軽にお声掛けください。尚、全ての症例が同じような結果になるとは限りません。治療前の病状によって術後結果も変わりますので、何か気になる点がありましたらご相談ください。