症例64 生物学的幅径確立後の、セラミック・インプラントによる審美歯科治療

1、2、

セラミック・インプラントによる審美歯科治療を行う前の写真
セラミック・インプラントによる審美歯科治療を行なった後の写真

1、2019年4月2日にご家族からの紹介で来院された67歳の患者様です。

右上4は銀歯、右上321、左上123には保険で治療できるレジン前装冠にて補綴治療(ほてつちりょう・・・歯にクラウンやブリッジや義歯を入れる治療)がおこなわれていましたが、クラウンは着色して、ブラックマージン(クラウンと歯肉の間に黒い線が出てしまったり、歯肉が 黒っぽく変色すること)が生じており、審美性が著しく損なわれていました。患者様はこのことをとても気にされており、全ての歯の審美治療を希望されました。この症例のブラックマージンの発生は、マージン(クラウンと歯の境目)部の2次カリエス(一度治療した歯が再び虫歯になること)が原因でした。

2、2020年8月3日治療後の写真です。

右上4321、左上123、左下5、右下5をセラミッククラウンで治療し直しました。左上1は保存することができなかったので、インプラントをおこなっています。どの歯がインプラントなのか、セラミッククラウンなのか分からないくらい、天然歯と見まごうばかりの審美歯科治療がおこなわれ、患者様にもとても喜んでいただけました。

3、

セラミック・インプラントによる審美歯科治療を行う前の写真

3、右上4321、左上123は全て失活歯(神経がない歯、あるいは神経が死んでいる歯)であり、再根管治療(過去に神経を取った歯の根の再治療)をおこないました。

左上1はこのように虫歯による歯の崩壊が著しく、保存することができず、抜歯することになりました。

4、5、

セラミック・インプラントによる審美歯科治療を行っている最中の写真
セラミック・インプラントによる審美歯科治療を行っている最中の写真

4、5、2019年8月21日、右上321、左上23の再根管治療を終え、貴金属製の土台を装着しました。

金属製の土台は精密に適合させるためには高度な技術が必要であり、現在では貴金属の価格が高騰しているため材料代が高価なのが欠点です。技術を習得して高精度のものを作製することができれば、レジン系の接着性セメントと非常によく接着するため、歯と一体化して、セメントが壊れない限り歯根が割れることはありません。昨今よく使用されているファイバーポスト(ガラス繊維を70%以上含んだ心棒)を使用したコンポジットレジン(樹脂製の歯の修復用素材)製の土台は、口腔内で直接築造するため、操作が簡単で材料代が安価であることが長所です。しかしながら、ファイバーポストとコンポジットレジンの接着力が脆いため、強度が保てずよく折れます。折れたファイバーポストをはずす場合には、コンポジットレジンの色が歯に似ているため、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を使用しても完全に取り去ることはできません。また一度固まってしまったコンポジットレジンは、レジン系の接着性セメントとの強い接着が期待できないので、クラウンが外れやすいという欠点があります。これらの理由から、当医院では、ほとんどの症例で、できるだけ適合を高めた貴金属製の土台を使用しています。金属製の土台を使うと歯肉が黒ずむという歯科医がいますが、それは全くの勘違いであり、金属製の土台を使うことと歯肉が黒ずむことは無関係です。このことは2の写真を見ていただければお分かりいただけると思います。そのような理由から、これら右上321、左上23には、適合の良好な貴金属製の土台を装着しましたが、全ての歯は2次カリエスが歯肉の下深くまで浸潤しており、生物学的幅径(せいぶつがくてきふくけい・・・歯肉が歯周組織のひとつのパーツとして有する歯と付着する機能)を侵害していました。歯肉の周りに歯質がほとんど見えません。このままの状態で補綴治療(ほてつちりょう・・・歯にクラウンやブリッジや義歯を入れる治療)をおこなっても、歯肉が炎症を起こして紫色に腫れたり、歯肉から出血するので、精密な印象採得(いんしょうさいとく・・・型を採ること)ができずに適合不良となり、さらに歯肉が炎症を起こすと同時に、術前同様にブラックマージンが生じて審美性が損なわれる結果となります。

以下にオペ中の写真があります。閲覧される場合にはポップアップ表示をされてください。

6、

歯冠長延長術(クラウンレングスニング)の写真

6、右上321、左上23に対して、生物学的幅径(せいぶつがくてきふくけい・・・歯肉が歯周組織のひとつのパーツとして有する歯と付着する機能)を構築するために歯冠長延長術(しかんちょうえんちょうじゅつ・・・歯茎や歯槽骨を削る歯周外科の一種で、歯肉を少し下げて、その下にある虫歯や歯が割れている部分を歯茎の上に出す治療法のこと)をおこないました。これらの歯周外科(歯の回りの歯肉や歯槽骨に対する手術の総称)は不用意におこなうと手術後に思わぬところまで歯肉が退縮したり、大きなブラックトライアングル(歯と歯の間のすきまと歯肉に囲まれた部分に出来る黒くみえる三角形の空隙)が生じることがあるので、熟練した技術が求められます。

7、8、

7、8、手術直後の写真です。

歯肉の周りにほんの少し歯質が見えるようになりました。

9、10、

歯冠長延長術と上顎前歯部にインプラントの埋入を行なった後の写真
歯冠長延長術と上顎前歯部にインプラントの埋入を行なった後の写真(咬合面観)

9、10、2020年1月23日、右上321、左上23に歯冠長延長術をおこなってから5ヶ月後に左上1にインプラント手術をおこないました。

11、12、13、

印象採得の為に支台歯形成を行った後に圧排を行なっている写真
支台歯の模型
支台歯の模型

11、12、13、2020年5月25日、左上1のインプラント手術をおこなって4ヶ月後に、右上12に歯肉圧排(しにくあっぱい・・・歯肉と歯の境目をだすために、その隙間に糸を入れて一時的に歯肉を広げること)して印象採得(いんしょうさいとく・・・型を採ること)をおこないました。

フィニッシュライン(支台歯の歯科医師が削った部分と削っていない部分の境界線、ここがクラウンと歯の境目・・・マージンとなる)の明瞭な模型が作製されました。このことこそが生物学的幅径が再構築された証です。なぜなら、正常な生物学的幅径が構築されていなければ、歯肉圧排ができないからです。このような一連の工程を確実におこなうことができなければ、2の写真のような審美歯科治療が達成されることはありません。

この症例は自由診療によるものですが、当医院では保険診療もおこなっております、どうぞお気軽にお声掛けください。尚、全ての症例が同じような結果になるとは限りません。治療前の病状によって術後結果も変わりますので、何か気になる点がありましたらご相談ください。

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