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1、2010年5月21日初診、40代女性。知人からのご紹介で来院されました。
インプラントとセラミックを用いて全顎的な治療をしたいという主訴でした。左上には④5⑥のブリッジが装着されていましたが、はずれてしまった状態でした。
2、左上4はジルコニアベースのオールセラミッククラウン、左上5はインプラント、左上6は金合金を用いたアンレー(歯のムシ歯治療のために切削した部分を埋めるために製作された詰め物で咬頭頂(奥歯のかみ合わせ部分)を一箇所以上含むもの)により補綴治療(ほてつちりょう・・・歯にクラウンやブリッジや義歯を入れる治療)をおこないました。インプラント手術による傷跡はありません。ブラックマージン(クラウンと歯肉の間に黒い線が出てしまったり、歯肉が 黒っぽく変色すること)やブラックトライアングル(歯と歯の間のすきまと歯肉に囲まれた部分に出来る黒くみえる三角形の空隙)を生じることもなく、適切な歯肉のスキャロップ(貝殻のような形をした歯肉の高低差)が構築されたことにより、インプラントとセラミッククラウンが歯肉と自然に調和しています。
以下にオペ中の写真があります。閲覧される場合にはポップアップ表示をされてください。
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3、インプラント1次オペ(インプラントを植える手術、インプラントを植えたあとは、歯肉を元にもどして、インプラントが骨と接合するのを3~6ヶ月待つ)をおこなった時の写真です。治療後の審美性を求めるのであれば、切開・縫合など歯肉の取り扱いには細心の注意が必要となります。
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4、インプラント2次オペ(インプラントに土台を立てて粘膜から貫通させる手術)直前の写真です。
歯肉の位置や形態がインプラント1次オペを行う前の1、の写真と何ら変化がないことに注目してください。このことはインプラント1次オペが丁寧におこなわれた結果です。もしも、手術により歯肉が退縮したり形が不整になった場合には、元に戻すことは非常に困難となります。
5、インプラント2次オペをおこないましたが、今回は周囲に十分な付着歯肉(歯と歯槽骨に付着している部分の硬くて厚い歯茎のこと。頬や唇をひっぱっても動かない可動性のない部分。抵抗力がありブラッシングや細菌などの外部からの刺激に耐えられる。抵抗がなく、可動性がある薄く柔らかい部分の歯茎は歯槽粘膜という)が存在したので、ティッシュパンチにて歯肉をくり抜く方法でおこないました。この方法は切開縫合しないので治癒も早く、綺麗に治ります。
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6、審美性や将来的な虫歯予防のために歯肉縁下(歯肉の縁よりも下の部分)にフィニッシュライン(支台歯の歯科医師が削った部分と削っていない部分の境界線、ここがクラウンと歯の境目・・・マージンとなる)が設定されている場合、精密な模型を再現するために、印象採得(型を採ること)の前に、歯肉圧排(歯肉と歯の境目をだすために、その隙間に糸を入れて一時的に歯肉を広げること)がおこなわれます。左上4に対して歯肉圧排をおこなった時の写真です。
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7、クラウン製作に使う模型です。
フィニッシュライン(支台歯の歯科医師が削った部分と削っていない部分の境界線、ここがクラウンと歯の境目・・・マージンとなる)が精密に再現されています。クラウンを作製する際にこのような模型でなければ、歯科技工士はフィニッシュラインが明確に分からず、マージン(クラウンと歯の境目)を「だいたいこれくらいだろう」と適当に決めざるをえません。そうなれば、マージンのフィットは望むべくもありません。マージンのフィットは理想的には30ミクロン以内で、60ミクロンを越えると何かしらの影響がでるといわれています。支台歯と歯肉がはっきり区別できないような模型でクラウンを作製したら、60ミクロンはおろか、500ミクロン(0.5mm)の誤差が生じてもなんら不思議ではありません。
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8、インプラントのチタン製アバットメント(インプラントにネジでとめる土台)の写真です。
このアバットメントの上にセラミッククラウンをかぶせることになります。インプラント周囲にスキャロップ形態の歯肉を構築するためには、他にも多くの方法があります。患者様の顎堤や歯肉の状態により、あらゆる方法の中から、適切な方法を我々が選択して治療をおこないます。